AGA治療を始める人の多くは、一〇代や二〇代の頃のようなフサフサの髪に戻ることを夢見ています。もちろん、それは素晴らしい目標ですが、現実的な治療のゴール設定として、フサフサだけを絶対的な正解にしてしまうことは、時に大きな苦しみを生む原因となります。なぜなら、AGAは進行性の疾患であり、加齢とともに髪の毛を生やす力そのものは自然と衰えていくからです。二十歳の頃の自分と今の自分を比較して、足りない部分ばかりを数えていては、いつまで経っても満足感を得ることはできず、治らないという不満を抱え続けることになります。AGA治療における現実的かつ賢明なゴールの一つは、現状維持です。「髪が増えていないから効果がない」と嘆く人は多いですが、もし治療をしていなければ、今頃もっと薄くなっていたはずです。進行を食い止め、今の毛量をキープできていること自体が、実は治療の大きな成果なのです。周りの同年代の友人たちが加齢とともに薄くなっていく中で、自分だけが変わらない姿を保てているとしたら、それは相対的に見れば大きな勝利と言えるのではないでしょうか。現状維持をポジティブに捉えることができれば、治療に対するストレスは大幅に軽減されます。また、年齢に応じた年相応の毛量をゴールに設定することも大切です。五十代、六十代になっても十代のような生え際を目指すのは不自然ですし、医学的にも困難です。年齢を重ねれば、誰でも多少は髪が細くなり、ボリュームは減るものです。それをAGAの進行のせいばかりにして薬を増量するのはリスクが伴います。ある程度の年齢になったら、「ハゲて見えない程度」「清潔感を保てる程度」の毛量で良しとし、完璧を求めすぎない余裕を持つことが、精神的な安定に繋がります。そして、最終的なゴールは、自分で決める出口戦略です。一生薬を飲み続けることに抵抗があるなら、「子供が成人するまで」「定年退職するまで」といった期限を設けるのも一つの方法です。あるいは、ある程度回復したら内服薬を減らし、外用薬だけで維持するフェーズに移行するなど、ライフステージに合わせて柔軟にゴールを変更していくことも可能です。
AGA治療のゴールはどこにあるのか