私が育毛剤を使い始めたのは、三十代半ばを過ぎた頃でした。ある日、鏡を見て分け目が以前より目立つことに気づき、これは何とかしなければと一念発起したのです。ネットで情報を集め、評判の良さそうな育毛剤を選び、期待を込めて使い始めました。最初の数週間は特に変化を感じなかったのですが、一ヶ月ほど経った頃から、明らかに抜け毛が増え始めたのです。シャンプーの時、ドライヤーの時、そして朝起きた時の枕元。見るたびに束になって抜ける髪の毛に、私は愕然としました。「良くなるどころか、悪化しているじゃないか!」と、育毛剤を使うのをやめようかと何度も思いました。これが、いわゆる「二次脱毛」というものだと知ったのは、さらに数週間後のことでした。製品の説明書を改めて読み返し、インターネットで検索して、ようやくこの現象が毛周期の正常化の過程で起こりうること、そして新しい髪が生えるための準備期間なのだと理解しました。しかし、知識として理解できても、実際に毎日大量の髪が抜けていくのを見るのは精神的に辛いものでした。特に私の場合は、その期間が比較的長かったように思います。周囲の体験談では「数週間で落ち着いた」という声が多い中、私は二ヶ月近く抜け毛の多い状態が続きました。毎日鏡を見るのが怖く、帽子が手放せない日々。「本当にこのまま続けて大丈夫なのだろうか」「自分だけ効果がないのではないか」という不安が常に頭をよぎりました。それでも、専門家のアドバイスや、同じように二次脱毛を乗り越えた人々の体験談を信じ、なんとか耐え抜きました。そして、三ヶ月目を過ぎた頃から、ようやく抜け毛が減り始め、産毛のような新しい毛が生えてきているのに気づいたのです。あの時の安堵感と喜びは、今でも忘れられません。二次脱毛の期間が長いと、本当に心が折れそうになりますが、それは新しい変化の兆しである可能性が高いです。諦めずに、そして不安な時は専門家に相談しながら、乗り越えてほしいと思います。