大学3年生の春、ふと合わせ鏡で自分の頭頂部を見た時、思わず息を呑んだ。そこには、以前は気にならなかった地肌が透けて見えていたのだ。「まさか自分が」。21歳という若さで薄毛を意識するなんて、夢にも思っていなかった。それまでは、薄毛は父親や祖父の世代の悩みだと、どこか他人事のように考えていた。しかし、現実は残酷だった。その日から、自分の髪の毛一本一本が気になり始め、シャンプー時の抜け毛の量に一喜一憂し、友人との会話中も相手の視線が自分の頭に向いているのではないかと疑心暗鬼になった。鏡を見るのが怖くなり、自信を失いかけた。何とかしなければという焦燥感に駆られ、インターネットで「20代 薄毛 原因」「若年性脱毛症 対策」といったキーワードで情報を漁り始めた。そこには、遺伝、生活習慣の乱れ、ストレスなど、様々な要因が書かれていた。振り返れば、当時の私は不規則な生活の典型だった。サークルの飲み会で夜更かしは当たり前、食事はコンビニ弁当やカップラーメンが多く、課題やアルバイトのストレスも溜め込んでいた。このままではいけない。そう強く感じ、まずは皮膚科の門を叩くことにした。医師の診断は、男性型脱毛症(AGA)の初期段階。遺伝的要因が大きいとのことだったが、生活習慣の乱れが進行を早めている可能性も指摘された。医師からは内服薬と外用薬による治療を提案され、同時に生活習慣の改善も指導された。正直、薬に頼ることに抵抗はあったが、藁にもすがる思いで治療を開始した。そして、食生活を見直し、睡眠時間を確保するよう努め、適度な運動も取り入れた。すぐに効果が出たわけではないが、数ヶ月経つ頃には抜け毛が少し減り、髪にハリが出てきたように感じられた。何よりも、積極的に行動したことで、精神的な落ち込みから少し抜け出せたことが大きかった。20代で薄毛に直面することは辛い経験だが、早期に気づき、適切な行動を起こすことの重要性を身をもって学んだ。