髪の毛が抜けるという、ショッキングな症状に直面した時、その原因がAGA(男性型脱毛症)なのか、それとも円形脱毛症なのか、多くの人は混乱してしまうかもしれません。この二つは、薄毛を引き起こすという点では共通していますが、その原因から治療法まで、全く異なる性質を持っています。両者の症状の違いを正しく見分けることは、適切な対策への第一歩です。まず、症状の「現れ方」に注目しましょう。AGAの進行は、「ゆっくり」で「予測可能」なパターンを辿ります。数年という長い時間をかけて、生え際(M字)や頭頂部(O字)といった、遺伝的に決まった部位から、じわじわと薄毛が進行していくのが特徴です。髪が細くなる「軟毛化」を伴い、全体のボリュームが徐々に失われていきます。一方、円形脱毛症の最大の特徴は、その「突然性」です。何の予兆もなく、ある日突然、コインのような円形または楕円形の「脱毛斑」が、頭部のどこにでも現れます。その部分の髪は、まるでカミソリで剃ったかのように、境界がはっきりと、きれいに抜け落ちてしまいます。次に、「抜け毛の質」も異なります。AGAで抜ける毛は、成長期が短縮された、細く短い産毛のような毛が多いです。しかし、円形脱毛症で抜ける毛は、元々は健康だった成長期の髪が、免疫システムの異常な攻撃によって、突然抜けてしまったものであるため、太さや長さがしっかりとした毛であることが多いです。さらに、「伴う症状」にも違いがあります。AGAは、通常、かゆみや痛みといった自覚症状は伴いません。しかし、円形脱毛症の場合、発症前に軽いかゆみや違和感を感じることがあったり、爪に点状のへこみなどの変化が見られたりすることがあります。もし、あなたの抜け毛が、「突然」「円形に」「健康な毛が抜ける」という特徴を持つなら、それは円形脱毛症の可能性が高いです。この場合は、AGA専門クリニックではなく、まずは「皮膚科」を受診し、正しい診断と治療を受けることが不可欠です。